今年、初めて新潟にご縁ができた。木材への愛情というつながりで、たった1日をその地の人々と過ごしただけなのだけど、それまでまるで未知だった街が、いつでも迎えてくれるところのような気がしてしまう。ふわふわと夢を見るように。
好きになった土地のことを知ろうと思っていたら、こんな本と出会った。あの、広々と豊かな信濃川が枯渇していた?
「水が消えた大河で〜ルポJR東日本・信濃川不正取水事件/三浦英之著」
2008~2009、水力発電に関する水利権取り消し処分に至るまでの朝日新聞ルポルタージュ。2010年に単行本出版、2019年に文庫化されたものだが、著者は2019出版当時には南相馬にいて、水力エネルギーから原子力エネルギーへとつながってしまった都会の経済を優先させた地方の環境破壊の構造を、前書き後書きの追記で補足し伝えている。
その地に住む人々、政治家、様々な立場からの意見のなかで、大企業側の個人が真摯な訴えの前になぜ嘘をつき続けることができるのか、集団に吸収されて意志を表せない風潮に深い懸念を示していた。嘘は人に大きなダメージを与える。そういうことは、もう、ふとした日常の中に潜んでいる。
その地に根ざして生きるということと、舟のようにその地に立ち寄ることには大きな違いがある。これは著者後書きとして追記されていたことなのだが、いつも部外者として風を運ぶような役割の自分も、よく感じること。